介護のための事前準備

前回、仕事と介護の両立についてお話したので、今回は元気なうちに話し合っておいた方が良いことや、事前にしておきたいことについてご説明していきます。

ケアマネ

両親が元気なうちに介護の話をするのも忍びないかもしれませんが、介護は急にやってきます。後々困らないよう、不安に思ったら準備をしておきましょう。

初心者ちゃん

正直、実家に帰省する度に両親が年老いていくのを実感して、これから先の介護のことについて不安になる日もありました…。ぜひ教えてください!

要介護者・家族と話し合うこと

介護がはじまった時に必要な情報として、下記のことが必要になってきますので、事前に確認することをお勧めしています。

どのような介護を受けたいのか

介護が必要となって時に、どのような介護を受けたいのか確認しましょう。最後まで自宅で過ごしたいのか、家族の迷惑になりたくないから施設で暮らしたいのか、その人の介護の希望を叶えられるよう、もしも具体的なイメージがなければ考えてもらうきっかけにしましょう。

1日の生活の様子

起床時間や就寝時間、食事の内容や時間、お風呂の頻度、外出の頻度、趣味や自宅での過ごし方など、ケアマネージャーが介護の計画を立てる時に必要となる情報を聞いておきましょう。

交友関係

要介護状態となり、外出がしづらくなった時に、どのような人達と会い仲良くしていたのかを聞くことで、会わせてあげることができるかもしれません。また、介護の先の話ですが危篤の時・お葬式に誰を読んでほしいのか、連絡先等も聞いておきましょう。

延命措置

万が一の事態となり救急搬送された時に、例えば人工呼吸器の装着や経管栄養の希望など、延命措置を希望するか確認しておきましょう。要介護者の意識がない時に聞かれるため、もし聞かれた時に本人の希望を代弁できるよう、本人とよく話し合う必要があります。

経済状況

入院や介護施設への入所・介護サービスへの支払いなど、介護を受けることの対価として支払いが生じます。本人が望む介護生活を、年金や今の預貯金で送ることができるのか、その他に民間の医療保険などの加入があるか、確認しておきましょう。

介護の心構え

初心者ちゃん

これから家族を介護していく中で気を付けるべき考え方や接し方はどのようなものでしょうか?

ケアマネ

要介護者だけではなく、高齢の方と接する中で気を付けるべきなのが「パターン・習慣・文化を変えない」ことです。

年齢が高くなるにつれ、適応力は低下し、急な変化や変更を受け入れられなかったり、ついていけなくなってきます。「お母さんの料理の手順、非効率だなあ」「お父さんの掃除、全然行き届いてないじゃないか」そう思うことがあるかもしれませんが、今のライフスタイルは、本人がこれまでの人生で培ってきたやり方です。無理に考え方を変えようとするのではなく、尊重していきましょう。良かれと思ってしてあげたことが、もしかしたら自分の価値観の押し付けになっているかもしれません。ご家族のプライドを傷つけないようにしてあげてくださいね。

ケアマネ

何でもかんでも手伝いすぎないこと。時間がかかってもできることは本人にやってもらいましょう。見守ることもやさしさです。

高齢になったり、どこか体に障害ができると、今までは普通にできていたことが、うまくできなくなってきます。昔と同じような感覚でいると、そんな両親の姿に「こんなこともできなくなったのか…」と落ち込むこともあるでしょう。動作が遅くなっていても、大変そうだからと手伝わないで本人にやってもらいましょう。できることを介護者が奪ってしまうと、どんどん弱ってしまうこともあります。日常生活がリハビリになると思い、温かく見守ってあげてください。

初心者ちゃん

何よりも、介護を受ける家族の気持ちになって接することが重要なんですね

その他にも…

初心者ちゃん

その他にも、やっておいた方が良いことなどあるのでしょうか?

前回の記事で、兄弟姉妹間で役割分担を決めておくことや、介護保険や介護者が利用できる制度の情報収集をお勧めしましたが、その他にもやるべきことはたくさんあります。

お金のこと

急な入院など、お金が必要になった場合にお金をおろす口座はどこでしょうか?口座を多くもっている場合はメイン銀行にしぼってお金をまとめ、使わない口座は解約しておきましょう。
口座がいくつもあると、死亡した時にそれぞれ手続きが必要となるため、後々大変なことになります。

モノの断捨離

もし、今後要介護認定をとって住宅改修を行うことになったり、レンタルで手すりを置いたり、車椅子を使うことになった場合、そのスペースや導線がしっかりと確保されているでしょうか?家の中が、ついついとっておいた思い出の品、期限切れの食品、子供の頃のおもちゃ、いつか使うかもしれないととっておいた物など、なかなか捨てられない物でいっぱいの場合は片づけ時です。

契約の整理

実家の電気やガス・インターネットなど、契約情報まで知っている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか?何かあった時に家族が契約を変更できるよう、一か所にまとめておきましょう。また、これらのIDやパスワードの類もわかるようにまとめておくと良いですね。

ケアマネ

現在では「デジタル遺品」なんていうものもありますからね!

デジタル遺品とは「インターネットやパソコン、スマホなどのデジタル機器で管理されているデータ」のことです。スマホの普及に伴い、SNSやネットの金融サービス・有料ゲームやサービスなど、どの年代の方でもできるようになりました。プライバシーを含むものであるため、取り扱いに悩むものとされています。

特に、「ネット銀行やネット証券」です。これらは「デジタル遺産」とも言われます。遺産相続と相続税の申告が終わった後、これらの財産の存在が分かった場合、やり直しになることがあります。

初心者ちゃん

こうやって身の回りのことを整理していくのは、いわゆる「終活」というものに近いのかな?

“終活”とは

終活とは「人生の終わりを考えることを通じ、残りの人生をいきいきとしたものにする」活動のことです。2009年頃から登場し、2012年の流行語大賞ではトップテンに選ばれたことで注目を集めました。また、「自分らしく生きる」という価値観が広まったことで、10年以上たった今でも一過性のブームを超え、ライフイベントとして根付きつつあります。
具体的には「葬儀やお墓の段取り」「身の回りの整理」「遺言の準備」「財産相続」などを指します。平均的には60代、定年退職などをきっかけに取り組む方が多いそうです。

ケアマネ

今では簡単に情報を整理できるノートも売っていますからね!人生を見つめ直し、これからの人生を考えるきっかけとしても好評だそうですよ。

おわりに

初心者ちゃん

「介護はまだまだ先」なんて考えていたけど、少しずつ、両親と話し合っていこうかなと思いました。

ケアマネ

そうですね!お盆やお正月など、家族みんなが集まる時に話してみてくださいね。

介護やその先のことまで事前に話をしておくことで、大切なご家族の希望を叶えてあげることができます。情報整理や実家の片付けなど、帰省した際に身近なできることからはじめてみてくださいね。